能楽『玄象』(観世以外は「絃上」)
は背景に「平家物語」の経正都落(つねまさみやこおち)
青山之沙汰のお話があります。 (巻第七)
この都落にはいる前に(実は私も部分的にしか読んだことが無い)
平家物語のあらすじからはじめましょう。
平清盛が太政大臣に昇りつめたのは仁安二年(1167)、
そして下関・壇ノ浦の合戦で平家一門の多くが海の藻屑と消えたのは元歴二年(1185)。
わずか二十余年の間に繰り広げられたそれぞれの栄耀と滅亡、
それが平家物語だと云われます。(経正は忠盛の孫、清盛の甥です)
忠盛┬清盛
├経盛──┬経正
├教盛 ├経俊
└忠度 └敦盛
六波羅殿の御一家の君達といひてンしかば、
花族も栄耀を面をむかへ、肩を並ぶる人なし。 (禿髪かぶろ)
ろくはらどのの ごいつけの きんだちといひてんしかば
かそくもえいようもおもてをむかへ、かたをならぶるひとなし
六波羅殿(平清盛)のご一家の公達といえば、堂上家の名門たる花族や英雄であろうと、
肩を並べ、顔と顔を合わそうとする者はない。(全注釈訳)
とまで云われた平家一門
保元元年(1156年)、鳥羽院の崩御をきっかけに、
天皇家や摂政家、武家などの内部対立が噴出、保元の乱が勃発。
それは後に「ムサノ(武者)世」の到来と理解される、時代の一大換点となるのです。
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平清盛の父忠盛(ただもり)は得長寿院(とくちょうじゅいん)を造進し、
その効で内裏の殿上人(てんじょうびと)となるなど、鳥羽院近巨としての地位を固めていた。
新興階層であるがゆえに他の殿上人たちと衝突(いわゆる殿上の闇討ち事件)も経験したが、 思慮深くそれに対処し、武家の地位を上昇させていった。
この忠盛が仁平(にんぴょう)三年(1153年)に没すると、
その跡を継いだ清盛は、平家一門の棟梁して、
保元の乱と、三年後の平治の乱という都を舞台とした二つの戦乱で功を重ねる。
そして次第にその存在感を大きくしていった清盛の官位昇進はめざましく、
武家初の公卿(くぎょう)となり、ついには太政大臣従一位に至り
「一天四海を掌のうち」とするのであった。
この後、清盛は病のために五十一歳で出家するが、その権威は揺るがず、
一門から公卿・殿上人・諸国の受領などを輩出し、
日本六十六カ国のうち、半数以上を知行国とし、また清盛は娘たちを介して、
天皇家との関係などもさまざまな縁威も結んでいった。
当時「六波羅殿(清盛)の御一家の君達」に肩を並べる者は無く、
清盛の義弟※時忠(ときただ)が
「此一門にあらざらむ人は皆人非人(にんぴにん)なるべし」と述べたというのは、
こうした栄耀ゆえのことであった。
(平安京の東を南北に流れる鴨川の東岸、五条から七条末にかけての六波羅の地こそ、
彼等の栄華の拠点だった。)
(六波羅に平氏の邸があったので平家、清盛を「六波羅殿」という。全集注釈)
※義弟(と書いてあるんですが時平の妹が清盛の妻なんで義兄?)図説平家物語本文儘書きます。
<都落ちのありさま> 巻第七のあらすじ
1183年(寿永二)木曾義仲は都へと接近していた。
延暦寺大衆の協力をも取り付けた義仲が、いよいよ入洛するとの報告が六波羅にも伝わる。
七月二十四日の夜、宗盛は建礼門徳子(けんれいもんとくこ)のもとを訪れ、
後白河法皇・安徳天皇を連れて都落ちする意思を伝えた。
ところが、法皇はそれを事前に察知し、密かに御所法住寺殿(ほうじゅじどの)を抜け出し、
鞍馬へと向かった。法皇所在不明との知らせが六波羅に伝えられる。
平家の人たちは騒然となり、やがて京中は大騒動となっていった。
明けて二十五日、平家一門は途方に暮れつつも、六歳の安徳天皇を伴い、
六波羅・西八条邸等に悉(ことごと)く火をかけながら都を離れていった。
維盛は愛するがゆえに妻子を都に留め、兄弟連れ立って専攻する行幸の後を追った。
歌人としての才に優れていた忠度は歌壇の大御所藤原俊成(しゅんぜい)のもとを訪れ、勅撰集入集への思いを託して都を落ちていった。
経正(つねまさ)は幼少時に仕えていた仁和寺(にんなじ)へ馳せ参り、かつて賜わった琵琶の名器「青山」を返上、名残を惜しみつつ暇(いとま)を乞うた。
忠盛┬清盛
├経盛──┬経正
├教盛 ├経俊
└忠度 └敦盛
高階基章子
├──────┬重盛──┬維盛
清盛 └基盛 ├資盛
├─┬宗盛 ├清経
時子 ├知盛 ├有盛
├重衡 ├師盛
└徳子(建礼門院) └忠房
|─────安徳天皇(六歳)
高倉天皇

系図は、参考資料としてこの本から書き出しました。
丁寧に書かれたあらすじや豊富な図譜、
戦いの場所や落人の道行き地図など、
眺めていても楽しい本です。
平家物語の「とっかかり」に役立ちました。
さて、本編は次回に・・・玄象なかなか出てこないのですが、
ちょっと前振りも重要かと・・・
参考文献: 図説平家物語 河出書房新社
平家物語全注釈 角川書店
平家物語 日本古典文学全集 小学館
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